紅き天
「う〜…。」
「もう落ち着けって。」
静乃を宥めながら疾風は芝居小屋を出た。
今日の芝居の内容が悲哀な感じだったのである。
「あの2人可哀想過ぎる。」
「ああ、来世で結ばれるといいな。」
静乃の肩を抱き、転ばないようにゆっくり歩く。
「何も引き裂く為に忍者送り込まなくてもいいじゃない…。」
「ちょっとあの恋人の親酷かったな。」
「かなり酷いよぉ。」
また感情が高ぶってきそうだったので、疾風はもう何も言わないことにした。
その間も静乃は泣きじゃくっている。
「私、何があっても疾風から離れないからね。」
「安心しろ、俺もだ。」
「疾風カッコいいよぉ。」
もはや、何が原因で泣いているのか分からない。
疾風は慰めるのを諦めて、船に乗り込んだ。