紅き天
やっと静乃が落ち着いてきた頃、2人は木更津呉服屋の前に着いた。
「もう大丈夫か?」
「うん、平気。
ゴメンね、ぐずっちゃって。」
「いやいや全然。」
疾風は私の頭に手を置いて言った。
「また行こうな。
今度は面白い芝居みて。」
「うん、楽しいのを。」
クスッと笑って私も頷いた。
「じゃあおやすみ。」
「おやすみなさい。」
なんか名残惜しいなぁ。
重い足取りで裏口に身体を運ぶ。
とその時、疾風がタタッと走って来た。
「待て。」
首を傾げて振り返ると、疾風の顔がすぐそこにあった。
期待して、私は目を閉じた。
ーーー…。