紅き天
ーーーーー……
ズルズルと引きずるような音が裏口から聞こえ、宗治は耳をすませた。
多分、この音は疾風だろう。
聞き慣れた下駄の音だ。
そして案の定、うなだれた疾風が入って来た。
「しんばり棒しとけよ。」
茶を啜りながら声をかける。
疾風はノロノロと棒を突っ掛け、土間を上がってきた。
「今度は何だ?
また喧嘩か。」
「違う。」
そう答え、疾風はドサッと畳に転がった。
「じゃあ何だ?」
「訊くな…。」
なーにをこんなに落ち込んでんだか。
他人事に笑ってまた茶を啜る。
俺、運無ぇな…。
情けない声で疾風は呟いてそのまま動かなかった。