紅き天



一方の静乃は基子に腕を引っ張られ、引きずられるように中に入った。



「母様、放してよ。」


「駄目じゃ。
まったく、お前も簡単に目を閉じよって。」


「私の勝手です!」



憤然と言い放ち、静乃は部屋に走り込んだ。



パシンと襖を閉め、ため息をつく。



「っつ…!」



母様に口付け邪魔された…!



どうしてこうも邪魔が入るの!?



別に私ももう結婚する時期なんだからいいじゃない!



イライラと部屋を歩き回り、着物を脱ぐ。



動かずにいられなかった。



「馬鹿ぁ!」



解いた帯を畳に投げつけ、息も荒く罵倒する。



可哀想な疾風。



哀れみもあって、疾風を思い出すと気が静まった。



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