紅き天
可哀想に…。







静乃が目をつぶって、もう少しで唇が重なりそうになった時、基子が駆けてきたのだ。



「馬鹿息子めが!」



そう罵り、静乃の手を引っ張って家に連れ帰ったのだ。



邪魔されたのだ。



期待を裏切られたのだ。



生殺しだ、あんなの。



双方ショックでしばらく動けなかったのをいい事に、基子はさっさとその場を離れた。



まったく、いい迷惑よ。



静乃にとっては母親だが、疾風にとってはただの邪魔な女だろう。



そう思うと悲しいやら情けないやら、静乃は顔を覆った。



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