紅き天
「俺は基子さんから静乃を取り上げるつもりはないし待つよ、基子さんが落ち着くまで。」


「大人だねぇ。」



すると疾風はやけくそに笑った。



「ハッ、今まで嫌ってほど待ったんだ、今更何て事ねぇよ。」



…ゴメン疾風。



心の底からそう謝った。



「まぁ、今のところ余裕があるっていうな。」



言って、疾風は静乃の肩に手を回した。



「大丈夫、浮気はしないようにするから。」


「する気だったのかお前!」



目を剥いてくれるな疾風。



静乃はサッと視線を外した。



「そりゃ、10年間疾風が好きだったけど、他にもいいなって思った人はいたわよ。
お客様にいい人いたの。」



語尾にハートがつきそうな声を出した静乃に一発蹴りを入れ、疾風は肩を外した。



「人が我慢するって言ってんのに嫌な奴。」


「ゴメンゴメン。
今は疾風一筋ですよ〜。」



言いながら静乃は疾風の背中に飛び付いた。



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