紅き天
呼び出し
店の中に戻ると、父さんが旅支度をしていた。
「どこか行くのか?」
「ああ、幕府さんから呼び出し食らってよぉ。
ちょっくら行って来るわ。」
聞いて、疾風は眉をしかめた。
「それってヤバくないか?」
「…覚悟はしておけ。」
そんな…。
バレたのか、殺し屋世界が。
「なんで…?」
「さぁな。
忍者が密告したんじゃねぇか?
同業者みたいなもんだから邪魔だったのかもな。」
なんで他人事なんだよ。
まず、市松の当主である宗治の首は間違いなく飛ぶだろう。
なら…。
「父さん、殺られるのか?」
「事によっては。
だから…。」
「なら、木更津の当主もだろう?」
疾風の言葉に、宗治は目を見張った。
「お前、木更津の事知ってたのか?」
「トップ争いをしている組があるって言ってたのを思い出した。」
なら、木更津…伝蔵の事までは知らないんだな。
ホッと宗治は息をついた。