紅き天
仕事
「静乃。」
店に帰ると、父の伝蔵が静乃を引き止めた。
「何?」
草履を脱ぎながら静乃が尋ねると、伝蔵は仕事だ、と言って接客に戻った。
仕事。
静乃は表情を引き締め、奥に入った。
「静乃、今回は二人相手故に断っても良いぞ。」
母の基子は心配そうに静乃を見やった。
母から書物を受け取りながら、静乃は首を振った。
「ううん、大丈夫。」
ざっと目を通し、静乃は目を細めた。
「偽金?」
「そうだ。
うちの客が持ってきた。
部下に調べさせたところ、そやつらが犯人だった。」