紅き天
疾風とはまた違った温かさに静乃は泣きそうになった。



「嫌です。
行かないで下さい。」


「そんな事をしたら…。」


「私は断固戦い抜きます。」



強い意志を固めた娘を見、伝蔵は首を振った。



「そんな事出来ないとわかっているだろう。
世界には逆らえない流れがある。
それは静乃も承知だろう。」


「知りません。」


「静乃。」



鋭い声を出し、基子は静乃を黙らせた。



「我が儘を言うな。」



すると一気に静乃は泣き崩れた。



「じゃあどうすればいいのですか!」


「黙って従うのみ。」



基子は言って、静乃を抱き寄せた。




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