紅き天
「今すぐと言われたから、私ももう行く。」



さよならとも、行って来ますとも言わず。



伝蔵は笠をかぶった。



「基子。」



最後に伝蔵と基子は無言で目を合わせ、伝蔵は出ていった。



「母様…!」



何も言わず、基子はただ静乃を抱き締めた。



今日、呉服屋は休業。



2人は一歩も外へ出る事もなく、寄り添って1日を終えた。












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