紅き天
「悪い悪い。
そういう意味じゃねーんだ。」



子供の頃から思っていたが、なんでいつも俺が謝るんだ?



別に今も俺が悪いわけじゃねぇのに。



少し膨れながら、さっさと歩いていく伝蔵を追った。



「で、作戦は?」


「さぁな。
向こうがどう出るか…。」


「なぁ、俺思ってたんだけどよぉ、これが罠だったら?
俺達が家を空けてる隙をついて家光の手下が攻め入ってくるんじゃねぇか?」



宗治の仮定に頷く伝蔵。



「私もそんな気がした。」


「じゃあ何で家を出た?」


「大方お前と同じ理由だ。」



ヒッヒッと笑って伝蔵の肩を叩く。



勿論、鋭い睨みが飛んできたがそんな事知るか。



「俺ももう疾風に任せてきた。
お前、疾風をどう思う?」


「娘を強奪する馬…。」


「そうじゃねぇだろ!」



まったく、コイツは隙あらば疾風を突き落とそうとする。



そんなに静乃が好くのが悔しいか。



「いい奴だと思ってやらん事もない。」



ボソリと呟かれた伝蔵最大級の誉め言葉。



伝蔵にしては上出来だ。



「そうかそうか、そう思うか。」



バンバン背中を叩くと取り消すぞと脅された。



「はっはっはっ。」



意味不明な笑いを残し、宗治は小石につまずいて溝に落ちていった。












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