紅き天

命令




いくらか夏への道を辿った頃、2人は江戸の街に着いた。



家来に木更津当主、市松当主だと告げるとすぐに部屋に通された。


少しも待たないうちに家光、家康に引き合わされる。



勿論、大量の護衛と共にだが。



2人が形式上の挨拶もしないまま、本題をふっかけられた。



「噂は家光から聞いた。
よく隠れてきたものだ。」



家康は成る程、天下を取った人物らしく威厳に満ちていた。



些か過剰な気もするがな。  



フン、と内心伝蔵は扱きおろす。



“どうやってこんなデブが天下取ったよ?”


“知ったことか。
どうせ卑怯な手でも使ったんだろう。”



2人が勝手にコンタクトを取っている間にも、家康はぐだぐだと喋っている。



“さっさと要件済ませろや!”



慣れない、したくもない正座を強いられ、早くも宗治は限界だ。



隣で伝蔵は涼しい顔。




< 166 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop