紅き天
命令
いくらか夏への道を辿った頃、2人は江戸の街に着いた。
家来に木更津当主、市松当主だと告げるとすぐに部屋に通された。
少しも待たないうちに家光、家康に引き合わされる。
勿論、大量の護衛と共にだが。
2人が形式上の挨拶もしないまま、本題をふっかけられた。
「噂は家光から聞いた。
よく隠れてきたものだ。」
家康は成る程、天下を取った人物らしく威厳に満ちていた。
些か過剰な気もするがな。
フン、と内心伝蔵は扱きおろす。
“どうやってこんなデブが天下取ったよ?”
“知ったことか。
どうせ卑怯な手でも使ったんだろう。”
2人が勝手にコンタクトを取っている間にも、家康はぐだぐだと喋っている。
“さっさと要件済ませろや!”
慣れない、したくもない正座を強いられ、早くも宗治は限界だ。
隣で伝蔵は涼しい顔。