紅き天
それがまた宗治の苛立ちを煽る。



「とまぁ、要するに両派に決闘を要請する。」


「んぁ?」



必死で膝の痺れと苛立ちと格闘していた宗治はいきなり終わりを告げた演説に情けない声を出した。



「決闘?」



代わって伝蔵が返事を返す。



「うむ。
今やそれらが頂点を争っていると聞いた。
我らが見届け人じゃ、文句あるまい。」



“大有りだボケぇ!”



隣で怒り心頭の宗治をサラリと無視し、伝蔵は家康に向かった。



「結構です。
天下は貴殿が治めておられる故に我らは影に潜み生きます。」


「これは命令じゃ。
どちらか一派が全滅するまで戦え。
勝った一派には徳川直属兇手とする。」



異論は許さん。



そう言い置き、家康は席を立った。



家光も後に続いた。



立った時の家光の勝ち誇った顔。



宗治どころか伝蔵まで殺気立たせた。



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