紅き天



行きの半分で我が家に着いた2人は早速奥に引っ込んだ。



今は敵対している組の当主であっても昔は血を分けた兄弟よりも仲が良かった2人だ。



対策は話し合い、もう家族にどう接するかも合わせてあった。



「疾風、帰ったぞ。」


「父さん!」



久し振りに聞く息子の声。



子供の頃のように無邪気に呼んでくれた事が今の宗治には特別嬉しかった。



…もう聞けなくなるだろうから。



一瞬顔が歪んだ宗治だったが、気を引き締め何事もなかったような笑った。



「よぉ、帰ったぞ。」


「おかえり。
早かったんじゃねぇか?」


「まあな。急いださ。」



笠と荷物をおろして疾風に渡す。



手際よく受け取り、疾風は壁の釘に荷物をかけた。



「疾風、これから戦だ。」


「戦?
どこと?」


「木更津。」



背後で息を飲む音が聞こえた。



昔から強敵だと教え込んであったせいでか?



「どちらか一派が全滅するまで、だとよ。」


「そんな…。」


「明日、向こうの当主と決闘してくる。」



本気で。



多分、俺が負けるだろう。



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