紅き天
昔から技術はピカイチだった伝蔵だ。



苦しまないように逝かせてくれるだろう。



「そんな、急に…。
何も準備が…。」


「幹部が補佐してくれるはずだ。
でなきゃ、お前がやれ。」


「待てよ、まるで負けるみたいに。」



疾風は久し振りに泣き顔を見せた。



まだ涙こそ見せてはいないが、もう顔が歪んでいる。



「いつも最悪の場合を想定しておけ。
いつも言ってるだろう。」



もう顔は見れない。



自分が泣きそうだ。



「疾風、嫌でも俺達はやり合わにゃいかんのだ。
当主の責任があるからな。
お前は適当に戦うフリをして仲間を逃がせ。
政府はこっちに何人いるかわかってないんだ。
手始めに下っぱからな。
木更津もそうするはずだ。」



そうすれば死人は最低限に押さえられる。



「疾風。」



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