紅き天



「基子、後は頼む。」


「死ぬなよ馬鹿たれ。」


「励ましと受け取ろう。」



伝蔵は静乃が駆け上がった階段を見上げた。



もうしばらくは降りて来ないだろう。



「何故こんな事に…。」


「家光が密告した。」



刹那、基子の目がギラリと光った。



「殺してくれる。」


「駄目だ。
そんな事をしたら両派とも潰される。」


「知った事か。
どうせ伝蔵も宗治も死ぬ。
貴様相討つつもりだろう。」



反論はしなかった。



基子は顔を覆って呻いた。



「わかった、後の事は任せろ。
静乃と…疾風は必ず守る。」



よくわかってくれた。



私の望みは、あの2人が普通に生きられる事。



その願いが叶えば命など投げ出してみせる。



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