紅き天
「なんとか生き延びてくれ。
そして徳川の目を誤魔化し、逃れてくれ。」


「わかっておるわ。」



涙を拭い、基子は頷いた。



「いつか家康、家光を討つ。
それは譲れぬ。」



伝蔵は苦笑し、頷いた。



まったく、強情な女だ。



「伝蔵、惚れて嫁いだわけではなかったが、この生活なかなかよかったぞ。」


「それは私の台詞だ。」



悪戯に口を吊り上げ、伝蔵は我が家を出た。








「おう、なんだ。」


「お前こそ。
…静乃は二階だ。」


「疾風もな。」



宗治とすれ違い、伝蔵は疾風のもとへと向かった。




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