紅き天
もうこれで登ることはないであろう階段を一歩一歩踏みしめて登り、疾風の部屋を開けた。
「なっ…!」
疾風は壁にもたれて泣いていた。
「どうかしたんですか。」
急いで涙を拭い、疾風は立ち上がった。
「いや、ちょっと用が出来て遠国に行くことになってな。
…別れを言いに。」
「そう、ですか。」
伝蔵は久し振りに会った旧友の息子をじっくり眺めた。
いつの間にか自分の背を追い越し、顔つきも変わっている。
ふむ、大分筋肉もついているな。
さすが次期当主。
「疾風、頑張れよ。
…それと、静乃を頼む。」
言って、了解も得ずに抱き締めた。
「えっ、ちょっと伝蔵さん?」
どうかしたの?
優しい声に首を振る。
本当にいい子だ。
「なんでもないよ。
元気で、な。」
複雑そうな疾風を残し、急いで階段を下りた。
もうあの子は私を伝蔵さんと呼ばないだろう。
明日、どっちが生き残ったにせよ、もう家名抜きでは付き合えなくなる。
胸に苦しいものを感じながら、伝蔵はひと足早く決闘場所に選んだ小山に向かった。
「なっ…!」
疾風は壁にもたれて泣いていた。
「どうかしたんですか。」
急いで涙を拭い、疾風は立ち上がった。
「いや、ちょっと用が出来て遠国に行くことになってな。
…別れを言いに。」
「そう、ですか。」
伝蔵は久し振りに会った旧友の息子をじっくり眺めた。
いつの間にか自分の背を追い越し、顔つきも変わっている。
ふむ、大分筋肉もついているな。
さすが次期当主。
「疾風、頑張れよ。
…それと、静乃を頼む。」
言って、了解も得ずに抱き締めた。
「えっ、ちょっと伝蔵さん?」
どうかしたの?
優しい声に首を振る。
本当にいい子だ。
「なんでもないよ。
元気で、な。」
複雑そうな疾風を残し、急いで階段を下りた。
もうあの子は私を伝蔵さんと呼ばないだろう。
明日、どっちが生き残ったにせよ、もう家名抜きでは付き合えなくなる。
胸に苦しいものを感じながら、伝蔵はひと足早く決闘場所に選んだ小山に向かった。