紅き天
朝、父さんは帰って来なかった。
どれだけ待っても、あの荒い足音は聞こえて来なくて。
店の入り口からも、家の玄関からも、裏口からも、「よぉ、帰ったぞ。」という太い声は聞こえて来なくて。
とうとう朝日が昇った。
まだ、逝ってほしくなかった。
まだ、色々教えて欲しかった。
だってまだ、俺は15だぜ?
薬も一人じゃ上手く作れないし、仕事だってまだ上手く切り盛り出来ない。
幹部の連中に示しがつくような偉業を遂げたわけじゃない。
まだ父さんなしでは生きていけないのに。
昨日の夕方、少しの説明をしただけで置いていくなんて…。
俺はどうしたらいいんだよ。