紅き天



人々が寝静まった深夜、静乃はくのいちが着るような袴式の着物を着て、家を出た。



足音を立てず、なるべく静かに歩く。



「静乃」とは、静かに、という意味を込めて両親がつけた名前だ。



「静かに」の真意を聞かされた時はかなりショックだったが、もともと気に入っていた名前だったので今は喜んでこの名前を使っている。



暗闇に紛れ、静乃は人を幾人か過ごした。



このくらいの事ならお手の物だ。




標的の家に着くと、静乃は屋根裏に登った。



本当に犯人か見極める為、話を盗み聞くのだ。



「さて。
今日はどのくらい儲かったかのぅ。」



ヒッヒッと気味の悪い笑い声を上げ標的の質屋は金を数え始めた。


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