紅き天
夢であって欲しい。



今すぐ後ろから突き飛ばして「さっさと開店準備しろってんだ。」とか怒鳴り飛ばして欲しい。



…なのに、この広い建物の中には俺独りだ。



「お前、何ちんたらしてんだよ。」なんて言われたら、「父さんが心配で寝れなかったんだよ!」なんて、嫌味言ってやるって、言い訳考えてたのに…。



いつもみたいに言い合う相手がいない。



寂しい。



怖いよ、父さん。



独りにしないでくれ…。



涙が後から後から溢れてきて視界を歪ませる。



息がまともに出来ないし、耳鳴りもしてきた。



だから薬、くれよ。



これ多分、病気だから、薬作ってくれよ父さん。



いくら悪あがきしても父さんが帰って来ないのはわかってる。



割り切れない。



無理なんだよ。




< 180 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop