紅き天
ーーー…。


「何情けない面してんだ?」



俺は耳を疑った。



「立て、男だろ。
そんなんで静乃護れると思ってんのか?」



父さんが荒々しい手つきで俺を引き上げ、言った。



「まったく、だらしねぇ息子だぜ。」


「父さん…。」



やっぱり父さんがいてくれなきなゃ。



うわごとのように、口からそう滑り出た。



「父さんが勝ったんだな。」



やっぱり、父さんは不死身だな。



嬉しかった。



ギュッと力強い肩に手を回す。



「やめろよ、俺ぁ疲れてんだ。
労れ馬鹿息子。」



馬鹿でもいい。



俺は父さんの息子だから。



それが誇りだから。



「父さん、大好きだ…。」



俺はなんだかフワフワした感覚に身を任せ、幸せな気持ちで意識が途切れた。






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