紅き天
カチャカチャと、何かが擦れる音で目が覚めた。
重いまぶたを開くと、知らない天井。
取り敢えず自分の家ではない。
身体を起こすと、額から冷たい物が落ちてきた。
拾い上げてみるとそれは濡らした手拭きだった。
「起きたか。」
ハッと声のした方をみると、基子が座っていた。
なにやら悲しそうだ。
「…俺、何をしました?」
「何も。」
「何でここに?」
「私が連れてきたのだ。
戸口で気を失っていたぞ。」
…え?
俺、父さんに運ばれて…。
なのに何でここに?