紅き天



カチャカチャと、何かが擦れる音で目が覚めた。



重いまぶたを開くと、知らない天井。



取り敢えず自分の家ではない。



身体を起こすと、額から冷たい物が落ちてきた。



拾い上げてみるとそれは濡らした手拭きだった。



「起きたか。」



ハッと声のした方をみると、基子が座っていた。



なにやら悲しそうだ。



「…俺、何をしました?」


「何も。」


「何でここに?」


「私が連れてきたのだ。
戸口で気を失っていたぞ。」



…え?



俺、父さんに運ばれて…。



なのに何でここに?




< 183 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop