紅き天
「あの子…宗治はまだ生きていると思っているのじゃ。」



怖くて、伝蔵の顔を見れない。



どうしたら疾風を傷つけないですむか。



今はそれが重要だ。



「基子。」



呼ばれて、顔を上げる。



「疾風をしばらくうちにおこう。」



基子は微笑んで頷いた。



「そうしよう。
…部屋は静乃と同じ部屋に。」


「………………………仕方ない。」



長い沈黙の後、伝蔵は頷いた。



今、疾風を安心させてあげられるのは静乃なのだ。



「早速用意してくる。」



立ち上がってパタパタ走っていく基子はどこか嬉しげだった。






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