紅き天
茶を飲み干すまでに食卓に料理は並んだ。



やはり男二人で作った大雑把な一品料理よりも手の込んだ細々としたものが並んでいる。



「では食べよう。」



サッと箸を取り、基子は手を合わせた。



「いただきます。」


「いっただきま〜す。」



次いで静乃も箸を取り、おかずを自分の取り皿に盛った。



「疾風、遠慮なく食べて、おかわりしてね。」



心配そうに言われ、疾風は内心自分を罵った。



「わかった、ありがとう。
遠慮しないから。」



心配させてどうするよ俺!



少しオーバーに箸を進める。



「俺、これ好きかも。」


「ホント!?
私が煮込んだんだよ。」



じゃがいもの煮付けを誉めると、嬉しそうに静乃は笑った。



「花嫁修業たからな。」



少しムスッとした声で基子は言い、フイッと顔を背けた。



…つまり、俺にやる為に静乃を仕込んでいると言ってるのか?



基子さんは俺が静乃をめとるのを許してくれたって事か!?



「基子さんありがとう!」


「フンッ。」



不機嫌な基子さんと上機嫌な俺を見比べ、静乃は首を傾げた。



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