紅き天
「なんでもないです。」



言って、酒をくむ。



基子さんは嬉しそうにお猪口をとった。



「静乃、肴はまだか?」


「はいはい。」



慌てて枝豆を盛った皿を机に置き、静乃はパタパタと後片付けに戻った。



「よし、飲もう。」



グッと一気に酒を煽り、基子さんはタンッと机に手を戻した。



くはーっ、と旨そうに目をつぶる。



そんなに旨いのか?



疾風も興味津々で口をつけた。



冷やかいような熱いような。



何とも言えない物が喉を通っていく。



こういうのをのど越しがいいと言うのか。



「旨い。」



疾風は飲み干すとすかさず基子が注いでくれた。



「だろう。
これはまだ初心者向けだ。
後々もっと旨いのを飲ませてやろう。」



奥ではいいな〜、と静乃が口を尖らせている。



目の前でこんなのが繰り広げられたらうらやましいだろうな。



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