紅き天
小さく手を合わせ、疾風は次の一杯も飲み干した。



「さすが宗治の息子。
初っぱなから飛ばすなんて、無謀じゃ。」



いっそ朗らかに笑われ、疾風は開き直った。



「そうだよ。
俺は父さんの息子だ、性格はそのままうつるんだよ。」


「酔ったか、疾風。」


「みたい。」



静乃もいそいそとやって来て、疾風がため口になった様子をじっくり眺めた。



「二杯一気に飲んだからだわ。」



呆れて静乃は片付けに戻った。



「嬉しかったんだろうよ。」



一応疾風の弁護もしてみるが、静乃はもう聞いていなかった。



「疾風、もっと飲むか?」


「うん。」



ニッコリ笑ってお猪口を突き出す疾風に、酔うのが早すぎはしないかと基子は笑った。







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