紅き天
■其の四■
仇
静乃の家に厄介になってその暮らしに慣れた頃。
佐吉が疾風を訪ねてきた。
「どーも。」
店の掃除をしていた疾風は慌てて物陰に連れ込んだ。
「何しに来たんだ。」
「いや何、宗治の仇を教えてやろうかと思いましてね。」
佐吉の言葉に疾風の手は緩んだ。
ニヤリ、と佐吉は笑った。
思う壺だ。
「宗治を殺してあんたを独りにしたの奴は、ここに行けばわかる。」
言いながら、佐吉は一枚の紙を渡した。。
「今夜、ここに行ってみな。
俺が約束取り付けてやったからな。
あんたは仇を討ってしまえばいい。
どっちか一派が全滅するまでなんだろ?
ならまずそいつからだ。」
佐吉は喋り終わるとさっさと去って行った。
何も言えずに佐吉を見送り、疾風は紙を開いた。
地図だった。
墨で書かれたそれはどうやら一軒の宿屋らしい。
…殺すにはうってつけの場所だ。
夜中、抜け出せば姿を見られることもない。