紅き天
「おあずけだ。」



意地悪く笑って、体を離す。



「じゃあ俺閉店するの手伝ってくる。
静乃は夕飯よろしく〜。」


「なんか今の疾風のテンション変…。」



不満そうに口を尖らせて、渋々静乃は俺の後ろをついてきた。



「私、さっさ頑張って甘えたのにな。」


「あんまり可愛いこと言うな。」



少々本気で静乃を小突く。



「別に普通の女の子はこれくらい言うもの。」



拗ねたか?



確かに静乃にはあり得ない暴挙だ。



「ゴメン。
別に嫌だったわけじゃないんだ。」



不貞腐れる静乃に必死で弁解する。



「嬉しかったよ、甘えてくれて。」



ギュッと腕を回すと静乃がもたれてきた。



「拒絶されたみたいに感じたの…。」


「してないから。」


「なんか、私だけ先走ってるのかなって思った。」


「むしろ俺だから。」



ようやく静乃は俺をみてくれた。



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