紅き天



静乃の機嫌が直らないまま、この時間がきた。



疾風は宗治の形見の刀を腰に刷き、待ち合わせ場所へ向かった。



これから修羅と化す。



もう、苦しませてやる。



助けてくれと懇願しても許してなんかやるもんか。



周りの音は掻き消されている。



もう、仇を討つことしか頭になかった。



どこをどう通って、どれくらい時間がかかったか覚えてない。



疾風は音をたてずに窓を開け、庭から忍び入った。



はずだった。



忘れていたが、相手は宗治よりも上手の兇手。



ガラッと障子を開けると、正座をした男が待っていた。



もっと驚いたのは……






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