紅き天
「伝蔵…さん?」



声が震える。



「どうして…。」



どうして貴方がここにいるんですか。



消え入るような声で疾風は訊いた。



伝蔵がゆっくりと顔を上げた。



久し振りにみる顔はとてもやつれていて、哀しそうだった。



「疾風。」



そう呼ばわった声も弱々しく、疾風の記憶していた伝蔵とは大きく異なっていた。



「私が憎いか?」



疾風は無意識に腰の刀に手をかけた。



本能がそうしたのかもしれない。



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