紅き天
「疾風、お前はまだ子供だ。
もう少し肩の力を抜け。
背負うものが多すぎる。」



涙がこぼれそうになって疾風は顔を逸らした。



「一人ではどうにも出来ないことがあるだろう。
そういうものは二人力が寄ると簡単に片付けられるものだ。」



私と宗治のようにな。



伝蔵は温かい笑みを浮かべた。



…この人にとって、父さんと過ごした時間はかけがえないものだったらしい。



疾風は父が少し誇らしかった。



「俺と静乃もそうなれるのかな。」


「私から、助言は求めていないだろう。」



そう言って伝蔵は声を上げて笑った。



確かにな…。



つられて俺も笑った。




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