紅き天
悲鳴を上げて、男は横凪ぎに倒れた。



死んでいることを確認し、女に向き直る。



「可愛いやり手さんね。」



肌けた着物を直そうともせず、女は静乃を舐めるように眺めた。



「私は、照日(テルヒ)。」



余裕綽々で名前まで明かす始末だ。



「貴女は?」



勿論、静乃は答えなかった。



声色を変えて、偽名を名乗るならともかく、声を出す事自体、殺し屋にはあるまじき行為だ。



「名乗る気はなさそうね。」



フフッと照日は笑い、体を起こした。



< 21 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop