紅き天
「もう存分に話しただろう。」



伝蔵は諭すように厳しく言った。



「でも…。」


「宗治が言っていた。
強くなれと。」


「そんな事言われても俺まだ無理…。」


「そういう甘えは通じない。」



ピシャリと言われて、疾風は俯いた。



「私はお前に殺られるなら本望だ。
お前の面子の為にも、私の名誉の為にも。」


「そんな事で手に入れられる面子はいらないし、アンタの名誉なんか知らない。
俺はやりたくない。」



普通に生きたいだけなんだ…。



「強くなれ、疾風。」



疾風は顔を上げた。



もう一人の父親が、いる。



疾風には伝蔵と宗治が重なってみえた。



わかってるんだ、本当は。



「死んでも化けて出て、相談にのってくれるならやるよ。」


「出来るならな。」



伝蔵はフッフッと低く笑って頷いた。



「あともう少し話してくれたら。」



伝蔵は怒って目を怒らせた。



「もう少しだけ。」



疾風が懇願すると、伝蔵は仕方なく頷いた。







天が白み始めるまで、伝蔵は疾風に今までの思い出話やアドバイスをした。



そして疾風は涙を光らせ、刀の柄に手をかけた。












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