紅き天

憔悴




疾風がいない。



朝起きて疾風の部屋をみたらいなかった。



「母様、疾風がいない。」


「放っておけ。
疾風にも色々あるだろう。」



基子は意外な程投げやりに言った。



驚いている静乃を落ち着かせようとあとから宥めてくれたが、静乃の耳には入らなかった。



「見てきます。」



うろうろと落ち着きなく歩き回った末、静乃は表へ飛び出した。



「疾風…。」



小声で呼んでみるものの、通りの人混みに疾風の姿は見当たらない。



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