紅き天
静乃が出て行ったあと、基子はため息をついて裏口に回った。
一瞬、疾風のことを話してしまいそうになった自分に嫌気が差す。
まったく、私としたことが。
額に手をあて、ため息をつき、門を見やった。
丁度、疾風が足を引きずって帰ってきたところだった。
「一応訊く。
私のことを聞いたか?」
かろうじて、疾風が頷いたのが見えた。
「そしてもう1つ訊く。
…伝蔵は?」
疾風は間を十分とって
首を横に降った。
基子は小さくそうか、とだけ口にした。