紅き天
「ゴメンなさい。」
「謝るな。
伝蔵も宗治を殺した。
おあいこだ。」
「…嫌な殺し合いですね。」
基子は黙って疾風の肩を抱いた。
相手が自分より背の高い男な為、基子が抱きつく形になったが。
「俺…。」
「何も言うな。」
疾風の背中を押し、基子は家に向かった。
疾風は悲しそうに目尻を下げ、唇を引き結んでいる。
自分の中で葛藤があっただろう。
朝まで殺すのをためらったのか、あるいは話していたのか。
後者であろう、伝蔵?
基子はすでに埋葬されているであろう夫に語り掛けた。
お前のことだから、すべて話したのであろう?
実はそこまで嫌いではなかったぞ。
負けを認めるような口調で小さく呟き、基子は目を閉じた。
伝蔵が出ていき、疾風が指定時間に家を出た夜、泣かないと誓った。
今、それは破られそうだ。