紅き天
予想外
「もう待てん!」
基子は叫び、立ち上がった。
おぉ、怖。
遠くに避難していた疾風はついっと首をすくめた。
「疾風、行くぞ。」
もう帰ってきて誰もいなくて不安がっても知ったことか。
仕事にどれだけ時間がかかっているんだ。
ぶつぶつと呟きながら戸を閉め、基子は疾風に怒鳴った。
「失敗るなよ疾風。」
「わかってますよ。」
もう何度めかの言葉にもう何度めかの返事を返した。
静乃への苛立ちを俺にまでぶつけないで欲しい。
疾風もさすがに不機嫌になった。
手配した馬車に乗り込み、疾風はわざと荒く座った。
何してんだよ静乃は。
基子の怒りの原因の静乃に泥をかぶってもらうのが筋だ。
疾風は気を静めるため、目をつぶって深呼吸した。