紅き天
「さっさとこれを渡せばよかったものを。」


「静乃は渡さん。」



地に響くような吠え声を発し、基子は家光にクナイを投げた。



すると家光は横に置いてあった刀を引き寄せ、見事全て叩き落として見せた。



まさか、家光にそんな技があったとは思ってもみなかった二人は再度攻撃を仕掛けることも忘れて唖然とその光景をみていた。



「余を甘くみるでない。」



家光はフッと口を吊り上げた。



疾風が腰の刀に手をかけたとき、腕の中の静乃がピクリと動いた。



三人は動きを止める。



「静乃?」



遠慮がちに疾風は呼び掛けた。



無事であって欲しいと願って。



どうやら無事らしい。



静乃は瞼を震わせ、目を開けた。



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