紅き天
くそっ!



ボンに負けてたまるか!



疾風は得意の突き技を連続で繰り出し、家光の足の靭帯を切って首に狙いを定めた。



が、その時、物音を聞きつけた衛兵が駆けつけ、静乃達の真横に整列した。



恐怖で身体が固まって動けないでいる静乃が目に入り、疾風は舌打ちして2人に駆け寄った。



「逃げるぞ!」



基子を肩に担いで静乃の手を引き、固められた入り口とは違う襖を蹴破り、走り出した。



まだ起きて10分も経っていない静乃は脚に力が入らず、疾風に引っ張られるように走っている。



「しっかり走れ!」



そんなことを言っても酷なだけなのはわかっていたが急かさずにはいられなかった。



予想外に人数が増えた上に、怪我人まででて疾風はパニック寸前だった。



今、まともに戦えるのは、いや、動けるのは自分しかいない。



混乱状態の中、疾風は必死で静乃を引っ張った。



幸いまだ城門は開いていて、疾風はホッと息をついて抜け出した。



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