紅き天
「息を引き取ったその場に埋めてあげたい。
この気温じゃ体が痛んじゃうから。」


「それはそうだけど、伝蔵さんと一緒に埋めてやった方が…。」


「え?」



手で土を掻き集めていた静乃の手が止まった。



「父様は死んでるの?」


「え、いや。」



口籠もる疾風から目を反らし、静乃は一心に土を基子の遺体にかけ始めた。



みるみる穴は埋まっていく。



しばらく黙ってその山をみていた静乃がゆっくり立ち上がった。



そして何か言おうと手を伸ばした疾風を無視し、静乃は馬を走らせ、荷台の一番後ろに移動した。



そして遠ざかっていく基子の墓となった木を見えなくなるまで見つめていた。



疾風は十分時を見計らって静乃に声をかけた。



「静乃。」


「ん?」



返ってきたのは思っていたより柔らかい声だったのでいくらか疾風の緊張は緩んだ。



「伝蔵さんな、俺が殺した。」



丸まって三角座りをしていた静乃の背中が伸びる。



静乃が振り向くのが怖くて床板を見つめた。



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