紅き天
「伝蔵さんと父さんは…。」



言って、疾風の頭に宗治と伝蔵が浮かんだ。



そして、強くなれという言葉も。



疾風はキッと顔をあげ、静乃の肩を掴んで振り向かせた。



「静乃、伝蔵さんと父さんは、木更津と市松の当主だった。

…俺は現市松当主で…お前は現木更津当主だ。」



今までにないくらいに静乃は目を見開いた。



「俺が、父さんの仇をとる為に、伝蔵さんを、殺した。」



疾風は声が震え、短く言葉が切れた。



「疾風が市松なの?」



無言で頷く。



今度こそ疾風は静乃から目を反らした。



次にどんな顔で何て言われるか、怖かった。



「そっか。
おじ様は死んでるのね。」



静乃の確認に疾風は頷いた。



「この1ヶ月で近い人達がみんな死んじゃった。」



最後の方は声が震え、静乃は口を押さえた。




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