紅き天
が、妙の目があまりにもそれを許してはくれそうになかったのでさっきの意志はどこへやら、また下を向く羽目になった。



「静乃、あまり人を想わないほうが身のためですよ。」


「小さい頃から何度も聞きました。」


「ならどうして今のような状態になっているのですか?」



ああ、もう、駄目だ。



苛立ちが襲う。



回りくどい説教なんてしてないでさっさと言ってくれればいいものを。



「すいません。」


「まあ、いじるのはこれくらいしておいて。

静乃。」



打って変って、冷たい声が前から飛んできた。



「いざとなったら疾風君も切り捨てなさい。
勿論、私もです。
今、守るべき人は当主である貴女なんですから。」


「はい。」


「貴女が死んだら次の直系はいないんですからね。」


「はい。」



そこはわかっている。



私が死んだら次はない。



そこで血が絶えることになる。




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