紅き天
でも、もし私と疾風の間に子供が生まれたらどうなるんだろう。



市松と木更津の両方の血を引いていることになる。



そうなれば、両派はひとつにまとまるかもしれない。



「妙さん、もし私と疾風の間に…。」


「許されません、そんなこと。」



すっぱりと切られ、静乃は不機嫌になった。



何もそんなキツく言わなくても。



「合併なんて、連中が頷くと思いますか?
第一、貴女の言う事を聞くかどうかも怪しいのに。」


「え…。」


「親が死んだからといっていきなり当主になった娘の言う事をほいほい聞けるほど出来た連中ではないんですよ。」


「どうしたらいいんですか?」


「大人しくしていなさい。」



妙は顔色ひとつ変えずに言ってのけた。



「下手に感情で動いて反感をかうことはありません。」



更に妙は厳しく続けた。



「たかが当主同士の、しかも若者同士の結婚如きで長年睨み合ってきたことをひっくり返せはしません。
甘い考えを捨てなさい。」



散々静乃を叩いたあと、妙は打って変わってきっちりフォローした。





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