紅き天
その人がなんでここに?



「連れてけ。」



ニヤニヤと静乃を見ていると思ったら、顎をクイッとしゃくってリヤカーの置いてある方向を指した。



それを見て静乃はサッと青ざめた。



どこへ連れて行かれるんだろう。



どうなるの?



「やだっ!
放して!」



抵抗虚しく荷台に押し込まれ、一人は静乃と一緒に寝転んだ。



上から藁で作ったござが被される。



所々隙間が出来て外の様子が伺えた。



誰か助けて…!



心の中で訴えるも、誰も気付いてくれない。



と、人混みから少し離れたところに疾風がいるのが見えた。



疾風!



「助けて疾風!!」



ガバッと起き上がり、静乃は声の限り叫んだ。



周りの人が驚いてこっちを見る。



そして、ただならぬ静乃の様子にざわざわと波紋が広がった。



「静乃!」



慌てて疾風が走って来る。



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