紅き天
「誰か知らないが俺が消してやる。」



その時、静乃はハッと思い出した。



「疾風!
私、私、」



急に慌てて出す静乃を心配そうに宥め、疾風は隣に座った。



「どうしたよ。」


「佐吉さん!」


「ハァッ?」


「佐吉さんがあの中にいたの!」



疾風は無言で素早く立ち上がり、外に向かった。



「やだっ!
疾風、行かないで!」



疾風が怪我なんかしたら嫌だ!



必死ですがりつく。



でも、疾風の力は小さい頃より格段に強くなっていて、とても静乃には止められなかった。



「疾風!」



疾風の着物にしがみつく形で外に出た。



と、そこにはズラリとさっきの面々が並んでいた。



静乃が小さく息を飲む。



反対に疾風はフッと笑った。



「そういう事か。」



チャキ、と一斉に刀を構える男達。



「狙いは俺達二人だったんだな。
静乃を庇った俺を反逆者扱いしたら邪魔者は一掃出来るもんな?」


「よくおわかりで。」



真ん中で一際目を光らせていた佐吉はうやうやしく言った。



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