紅き天
「こんな時に何を言っているんです。」



ピシャリとした声が耳に入り、静乃は固まった。



「まったく、胸騒ぎがして駆け付けてみれば。
しかも呑気にそんなことを口にして。」



驚いている静乃に少しも構わずポンポンと歯切れよく言葉を発する。



みんなが一斉に見ている先には



妙の姿があった。



「妙さ…。」


「知ってるのか?」



静乃は疾風の着物を握ったままコクコクと頷いた。



それに気付いた妙は自ら自己紹介した。



「私は妙、静乃の母基子の姉で静乃の伯母です。」



テキパキとした妙の態度に圧倒され、敵も好きなようにさせてしまっている。



だが、疾風は嬉しそうに笑っている。



不思議そうに静乃は疾風を見上げた。



「俺、基子さんに姉がいるとは聞いていたけど、実際に会ったことはなかったし名前も知らなかったんだ。
やっと会えたなってさ。」


「そっか。」



でも疾風、私達、今怒られてるんだよ?



「静乃、さっきと倒しておしまいなさい。
貴方の腕ならすぐでしょう。」



縮こまっている静乃をチラリと見やり、妙は命令口調になった。



「静乃、今すぐ敵を抹殺なさい。
今すぐです。」



これは何かの魔法か。



体が軽くなり、頭も働き出した。





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