紅き天



朝、静乃に言い渡された罰は外出禁止だった。



…疾風と会うという選択肢は見事に潰えたのだった。



「静乃、しばらく裏で裁縫でもしていなさい。」



朝食の片付けをしていると、伝蔵は茶を啜りながら言った。



「嫁入りの時に役立つだろう。」



嫁入り…?



静乃は父を振り返った。



「まさか…。」


「この間、縁談が持ち込まれてな。」



目を逸らしながら、伝蔵は言った。



「なかなかいい相手で、一度会ってみないか。」


「結構です。」



プイッと顔を背け、静乃は台所を出た。



嫌だ、結婚なんて。




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