紅き天
静乃は嬉しそうに顔を綻ばせ、疾風の手を握り返した。



「疾風!」



川辺につけた船の中で男が叫んだ。



「待ってください父様!」



疾風は慌てて叫び、静乃を引っ張った。



「静乃、急げ。
本当に怒られる。」



二人は市松の当主、宗治に町に連れて来てもらったのだが、つい遊び過ぎて約束の時間に遅れたのだった。



「ゴメンなさい、おじ様。」



船に乗って動き出すと、静乃は息を整えながら謝った。



「静乃、今度から放っておくぞ。」



真面目な顔で叱られ、静乃はついっと首をすくめた。



「冗談だ。
楽しかったか?」



萎れる静乃の肩に手を置き、宗治は二人に尋ねた。



「うん!
飴を買って食べたんだ。」



さっきまでは火の粉が飛ばないように静かにしていた疾風がはしゃいで声を上げた。




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