紅き天
「…なあ、もう潰さないか、両派とも。」


「え?」



不審そうに疾風を窺う。



「もう殺し屋なんてものはいらないんじゃないか?」


「どうして?」


「俺らの職業なんて、ない方がいいんじゃないか?」



静乃は目を伏せている。



「普通に暮らしてみないか?」


「私達の代で歴史を潰すの?」



それは…。



考えてなかった。



どうしたらいいんだろう。



「俺の考えはな?

この世に殺し屋なんてものがあるから、人間は嫌いな奴は頼んで消してもらえばいいや、なんて甘ったれてくんだと思う。
卑怯だ。
自分の手を汚さずに金で人の命を奪うなんて。
金持ちは自分の思い通りに人選できて、貧しい人は頑張って人付き合いしてる、それっておかしいと思う。
俺達はこの道で生きていく為に生まれて、教育されてきたからこれからどうすればいいか途方に暮れると思う。
でも、俺には父さんが残してくれた薬屋があるし、静乃には呉服屋がある。
もしかしたら、俺らの先祖は兇手を止めた時の為に店を代々残していったんじゃないかな?カモフラージュの為じゃなくて。」



ここまで一気に言い、疾風は静乃の反応を見た。



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